知行合一(ちこうごういつ)
中国、明代の思想家、王陽明のおこした学問である陽明学の命題のひとつ。
論語の為政第二にある「先ず其の言を行い、而して後にこれに従う」が元になっている。
彼は、人間を“現在”と理解した。人間が真に実在するのは“今”だけである。現実に存在する、すなわち現在するとは、分割不可能な一瞬の今にしか実在しないということ。人間の知(認識)・行(行為・実践)というも、朱子学以来の伝統的用法にのっとって、“現在”する人間の活動形態を仮にそのように分別し限定して表現しているにすぎない。知行を実践する主体の存在自体が分割不可能な時間の“今”にしか実在しないのだから、知・行という分相を主体(心という)に返して理解するなら、知・行の両者を先後軽重に分別することはできない。このことを知行合一と表現した。
つまり、知ることと実行することとは本来二つには分けられない。知って行わないのは、未だ知らないことと同じであるとする実践重視の教えである。
朱子学が万物の理を極めてから実践に向かう「知先行後論」に傾きがちであったことや、明代の俗学が実践を伴わない空論に流れていたことを批判して、知行合一を主張した。