個人市民税・県民税の所得の種類と所得金額
所得とは、収入の金額から必要経費を差し引いた金額をいいます。
所得の種類は全部で以下の10種類です。
1 給与所得 2 雑所得 3 利子所得 4 配当所得 5 不動産所得
6 事業所得(営業、農業) 7 譲渡所得 8 一時所得 9 山林所得 10 退職所得
総所得金額
10種類の所得のうち、退職所得、山林所得および譲渡所得(分離課税分)を除いて合計した金額(損益通算し、純損失・住居用財産の買換え等の場合の譲渡損失・特定住居用財産の譲渡損失および雑損失の繰越控除をした後の金額)をいいます。
合計所得金額
純損失、雑損失、居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失および特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除を適用する前の総所得金額、特別控除前の分離課税の長(短)期譲渡所得の金額、株式等に係る譲渡所得等の金額、先物取引に係る雑所得等の金額、山林所得金額、退職所得金額の合計額をいいます。
1 給与所得
会社などに勤めている方が、支払いを受ける給料・賃金・賞与など(パート・アルバイトによる収入も含む)を給与収入といいます。
その給与収入から給与所得控除(他の所得でいう必要経費に相当するもの)を差し引いた金額を給与所得といいます。
○ 給与収入-給与所得控除=給与所得
-
令和2年度以前の場合
給与収入の金額 | 給与所得控除額 |
---|---|
1,619,000円未満 | 650,000円 |
1,619,000円以上1,620,000円未満 | 969,000円 |
1,620,000円以上1,622,000円未満 | 970,000円 |
1,622,000円以上1,624,000円未満 | 972,000円 |
1,624,000円以上1,628,000円未満 | 974,000円 |
1,628,000円以上1,800,000円未満 | ※A ×2.4 |
1,800,000円以上3,600,000円未満 | A × 2.8 - 180,000円 |
3,600,000円以上6,600,000円未満 | A × 3.2 - 540,000円 |
6,600,000円以上10,000,000円未満 | 収入の金額 × 0. 9 - 1,200,000円 |
10,000,000円以上 | 収入の金額 - 2,200,000円 |
(注意)A=給与収入額÷4(千円未満の端数は切り捨て)
- 令和3年度以降の場合
給与の収入金額 | 給与所得控除額 |
---|---|
1,625,000円以下 | 550,000円 |
1,625,000円超1,800,000円以下 | 収入金額×40%-100,000円 |
1,800,000万円超3,600,000円以下 | 収入金額×30%+80,000円 |
3,600,000円超6,600,000円以下 | 収入金額×20%+440,000円 |
6,600,000円超8,500,000円以下 | 収入金額×10%+1,100,000円 |
8,500,000円超10,000,000円以下 | 1,950,000円(上限額) |
10,000,000円超 |
次に該当する場合は、給与所得から所得金額調整控除が控除されます。
1 給与等の収入金額が850万円を超え、次のア~ウのいずれかに該当する場合
ア 本人が特別障がい者に該当する
イ 年齢23歳未満の扶養親族を有する
ウ 特別障がい者である同一生計配偶者若しくは扶養親族を有する
【所得金額調整控除額の算出方法】
(給与等の収入金額(1,000万円を超える場合は、1,000万円)-850万円)×10パーセント
2 給与所得控除後の給与等の金額および公的年金等に係る雑所得の金額があり、給与所得控除後の給与等の金額と公的年金等に係る雑所得の合計額が10万円を超える場合
【所得金額調整控除額の算出方法】
(給与所得控除後の給与等の金額(10万円を超える場合は、10万円)+公的年金等に係る雑所得の金額(10万円を超える場合は、10万円))-10万円
(注意)1の控除がある場合は、1の控除を使用した後の金額から控除します。
2 雑所得
国民年金・厚生年金などの公的年金等(遺族年金、障がい年金など非課税所得に当てはまるものは除く)や生命保険契約などに基づく私的年金、および事業以外で得た原稿料・印税・講演料・謝礼など、ほかの所得に当てはまらない所得を雑所得といいます。
雑所得の計算方法は、公的年金とそれ以外の雑所得で次のような違いがあります。
公的年金等の雑所得の場合
公的年金等の収入-公的年金等控除額=公的年金等の雑所得
公的年金等の収入から雑所得を計算する場合は、以下の表のとおりです。
- 令和2年度以前の場合
受給者 の年齢 |
公的年金等の収入(B) | 公的年金等控除後(雑所得)の金額 |
---|---|---|
65歳未満
|
700,000円以下 | 0円 |
700,001円~1,299,999円 | B - 700,000円 | |
1,300,000円~4,099,999円 | B × 75% - 375,000円 | |
4,100,000円~7,699,999円 | B × 85% - 785,000円 | |
7,700,000円以上 | B × 95% - 1,555,000円 | |
65歳以上
|
1,200,000円以下 | 0円 |
1,200,001円~3,299,999円 | B - 1,200,000円 | |
3,300,000円~4,099,999円 | B × 75% - 375,000円 | |
4,100,000円~7,699,999円 | B × 85% - 785,000円 | |
7,700,000円以上 | B × 95% - 1,555,000円 |
受給者の年齢 |
公的年金等の 収入金額(B) |
公的年金等の雑所得以外の合計所得金額 | ||
---|---|---|---|---|
1,000万円以下 |
1,000万円超 2,000万円以下 |
2,000万円超 | ||
65歳未満
|
1,300,000円以下 | 600,000円 | 500,000円 | 400,000円 |
1,300,001円~4,100,000円 |
(B)×25%+275,000円 | (B)×25%+175,000円 | (B)×25%+75,000円 | |
4,100,001円~7,700,000円 |
(B)×15%+685,000円 | (B)×15%+585,000円 | (B)×15%+485,000円 | |
7,700,001円~10,000,000円 |
(B)×5%+1,455,000円 |
(B)×5%+1,355,000円 |
(B)×5%+1,255,000円 |
|
10,000,001円以上 | 1,955,000円 | 1,855,000円 | 1,755,000円 | |
65歳以上
|
3,300,000円以下 | 1,100,000円 | 1,000,000円 | 900,000円 |
3,300,001円~4,100,000円 |
(B)×25%+275,000円 | (B)×25%+175,000円 | (B)×25%+75,000円 | |
4,100,001円~7,700,000円 |
(B)×15%+685,000円 | (B)×15%+585,000円 | (B)×15%+485,000円 | |
7,700,001~10,000,000円 |
(B)×5%+1,455,000円 |
(B)×5%+1,355,000円 | (B)×5%+1,255,000円 | |
10,000,001円以上 | 1,955,000円 | 1,855,000円 | 1,755,000円 |
65歳以上であるかどうかは、前年の12月31日(納税者が年の途中で死亡または出国する場合には、その死亡または出国の時)の年齢によります。
私的年金およびその他の雑所得の場合
雑収入-必要経費=公的年金等以外の雑所得
雑所得の金額
公的年金等の雑所得+公的年金等以外の雑所得=雑所得
年金所得者の申告手続の簡素化について
前年中の公的年金等の収入金額が400万円以下であり、かつ、その年分の公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である場合には、その年分の所得税について確定申告書を提出することを要しないとされました。
(注意) 上記の場合であっても、所得税の還付を受けるための申告書の提出をすることができます。
(注意) 公的年金以外の所得金額が20万円以下で所得税の確定申告書の提出を要しない場合であっても、住民税の申告が必要です。(農業所得や不動産所得など)
3 利子所得
公社債・預貯金の利子などによる所得を利子所得といいます。
利子所得には、必要経費はありません。
収入がそのまま所得になります。
なお、平成28年1月1日以後に支払いを受けるべき特定公社債の利子等については、その支払いを受ける際に、所得税15.315%(復興特別所得税含む)・住民税5%が源泉徴収され、申告分離課税の対象とされますが、申告しないことも選択できます。
(注意)特定公社債とは、国債、地方債、外国国債、公募公社債、上場公社債、平成27年12月31日以前に発行された社債(同族会社が発行した社債を除きます。)などの一定の公社債や公社債投資信託などをいいます。
4 配当所得
株式会社などの法人から受ける利益の配当・剰余金の分配などによる所得を配当所得といいます。
株式などを取得するための借入金の利子が必要経費になります。
配当収入-借入金の利子=配当所得
配当所得のうち一定の上場株式等の配当等に係る所得については、所得税15.315%(復興特別所得税含む)・住民税5%(平成25年12月31日までは所得税7.147%(復興特別所得税含む)・住民税3%)の割合で天引きされますので、原則として申告する必要はありません。
区分 | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|
上場株式等 (発行済株式等の5%以上を保有している大口保有分を除く) |
源泉徴収<税率15.315%(復興特別所得税含む)> 源泉徴収されているので、原則として確定申告は不要です。 確定申告をした際には総合課税と分離課税が選べます。 ただし、分離課税を選択した場合、配当控除は適用できません。また、上場株式等の譲渡所得の損失と損益通算が可能となります。 |
特別徴収<税率5%> 特別徴収されているので、原則として申告は不要です。 申告をした際には総合課税と分離課税が選べます。算出した所得割額から配当割額が控除されます。 ただし、分離課税を選択した場合、配当控除は適用できませんが、上場株式等の譲渡所得の損失と損益通算が可能となります。 |
発行済株式等の5%以上を保有している上場株式 一般株式 |
源泉徴収<税率20.42%(復興特別所得税含む)> 確定申告が必要となり、総合課税されます。 |
特別徴収されません 申告が必要となり、総合課税されます。 |
5 不動産所得
家賃・地代、船舶や航空機などの不動産の貸付(事業所得または譲渡所得に該当するものを除く)による所得を不動産所得といいます。
修繕料、減価償却費、固定資産税などが必要経費になります。
不動産収入-必要経費=不動産所得
(注意)平成26年1月より、帳簿の記帳および保存が義務付けられました。
6 事業所得
事業所得は、営業等所得と農業所得の2種類に分けることができます。
営業等所得
小売業・卸売業・製造業・サービス業、自由職業(医師・作家・弁護士・保険外交員など)、畜産業、漁業など農業以外の事業から生ずる所得
農業所得
米、野菜などの栽培若しくは生産、または農家が兼営する家畜、家きんなどの育成、肥育、採卵若しくは酪農品の生産などの事業から生ずる所得
事業収入-必要経費=事業所得
(注意)平成26年1月より、帳簿の記帳および保存が義務付けられました。
7 譲渡所得
土地・建物・株式・ゴルフ会員権などの資産を譲渡したことによる所得を譲渡所得といいます。
譲渡した資産を保有していた期間によって、「長期譲渡所得」と「短期譲渡所得」の2種類に分けられます。
また、資産の取得費と譲渡費用が必要経費として認められています。
分離課税の対象となる土地等および建物等の譲渡
長期譲渡所得
譲渡の年の1月1日現在において、所有期間が5年を超えるもの
短期譲渡所得
譲渡の年の1月1日現在において、所有期間が5年以下のもの
総合課税の対象となる資産の譲渡(土地等および建物等以外の資産。有価証券は除きます。)
長期譲渡所得
その取得の日以後、譲渡の日までの所有期間が5年を超えるもの
短期譲渡所得
その取得の日以後、譲渡の日までの所有期間が5年以下のもの
譲渡収入-必要経費-特別控除=譲渡所得
(注意)特別控除は、総合譲渡の場合長期譲渡所得と短期譲渡所得を合わせて50万円が限度です。
長期譲渡所得は2分の1後の金額が所得となります。
また、土地・建物などの譲渡、株式の譲渡については、収用や居住用財産を譲渡した場合など特別控除の特例があり、ほかの所得と区分して、それぞれの税率等が適用されます。
8 一時所得
生命保険の満期受取金、競馬・競輪の払戻金、クイズの当選金など一時的な所得を一時所得といいます。
収入を得るためにかかった費用などが必要経費になります。
一時収入-必要経費-特別控除=一時所得
(注意)特別控除は、50万円が限度です。また、課税対象となるのは、一時所得の2分の1の金額です。
9 山林所得
山林を伐採したり、立木のままで譲渡したことにより生ずる所得を山林所得といいます。
植林費、管理費、伐採費などが必要経費になります。
山林収入-必要経費-特別控除=山林所得
(注意)特別控除は、50万円が限度です。また、市民税6%、県民税4%の税率で課税されます。
10 退職所得
退職金、一時恩給などの所得を退職所得といいます。
(退職収入額-退職所得控除額)×2分の1=退職所得
勤続年数 | 退職所得控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円) |
20年超え | 800万円+70万円×(勤続年数−20年) |
(注意1)1年未満の端数月があるときは、1年として計算します。
(注意2)取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事などで役員等としての勤続年数が5年以下の特定役員については、「退職収入額-退職所得控除額=退職所得」
(注意3)退職所得に対する住民税は、原則として所得の生じた年に、他の所得と区分して、退職した年の1月1日に住んでいた住所地で特別徴収で課税されます。